この記事の監修:安藤俊介さん
アンガーマネジメントとは?
「喜びや悲しみと同様に、“怒り”は人間の自然な感情。アンガーマネジメントは怒りをガマンするのでなく、怒りの感情を認めて上手にコントロールする方法です」
女性では家事や子育て、仕事、人間関係など、日々の生活で生じるイライラに悩む人が多い傾向があり、特に怒りの感情は、身近な対象ほど強くなります。「夫だからわかってくれるはず!」「わが子なのに、なぜ思い通りにならない!」などと、期待を裏切られたと感じて怒りが増幅してしまいます。
そこで怒りを抑える努力よりも、上手に怒る方法やスルースキルを。怒りと上手につきあうアンガーマネジメントを身につけると、ムダなイライラが減り、自分も周りもぐんと楽になりますよ!
あなたのイライラ・怒りの危険度診断
さて、診断結果は…?
これがイライラや怒りの正体!
怒りの原因は、自分や他人への2つの「すべき」
“すべき”は、実はひとそれぞれ。自分自身が何を「~すべき」と思うのか認識しておくと、イライラしたとき「またとらわれている」と冷静になれます。また、周囲の人の“すべき”も知っておくと、衝突を避けられます。
●例えば…
PTAの役員に選ばれたが、人前でうまく話すことができなかった。あとで思い出して自分に腹が立つ。
→「自分はこうあるべき」というセルフイメージが守れないと、理想と現実のギャップでイライラが。自分に対する許容範囲をもっと広げてあげましょう。
【他人に対する怒り】
●例えば…
休日、家事や育児を手伝わない夫にムカムカ。いちいち言わなくても忙しいのはわかるはず!
→ 育った環境で身についた自分の常識が通じないと、「こうすべきなのに!」という怒りに。自分の「当たり前」が、他人にとっては違うことを理解して。
「~すべき」が多い人ほど怒りやすい
【例】「宿題は帰宅後すぐやるべき」と思うお母さん。
左のタイプだと「すぐやる」以外は、すべて3の「許せないゾーン」です。そこで、「夕食後でも」「寝るまで」「最悪、明日の朝でも」と、2の「まぁ許せるゾーン」を増やすことで怒りを減らせます。
イライラの怒りはこうして解消! アンガーマネジメントの方法
●怒りのスルースキル 5つのテク
カッ!と沸く怒りの感情も、その最大のピークは6秒程度。カッとなったら、心の中で6つ数えるなどしてやりすごして。怒りが消えなくても、6秒後には少し冷静に対応できるようになり、後悔するほど相手に怒鳴るなど、最悪の事態は避けられます。
お姑さんと台所に立っていたら「大根のかつらむきもやったことないの?」。そこで内心「イヤミねっ!」とムカッ。
ムカつくのは「主婦失格ってことね!」などと拡大解釈するから。“かつらむきをやったことがない” 事実を指摘されただけなので、「ええ、初めてなので教えてください」と返せば、むしろかわいがられることも。言葉を裏読みして怒りを生みだすクセを見直して。
年末年始やお盆などに顔を合わせる夫の親族が苦手。でも、縁は切れない…。世の中には変えられるものとそうでないものがあり、他人の性格は変えられません。それを変えようとイライラするのは時間と心のムダ。時間差で訪問して顔を合わせる時間を減らすなど、“できる”ことを探して。
「あのとき言い返せば…」などとイラついているとき、意識は現実から離れています。
怒っていると、昔のイヤなことを思い出したり、未来の心配をしがち。するとムダに怒りが増幅します。
目の前で起きている現実に集中することを“マインドフルネス”と言い、怒りの炎上を防ぐ効果があります。歩きながら「空がきれい」と感じたり、食事中は「おいしい」など、今起きていることだけを考えるようにして。1日5分でも続けると思考が変わり、怒りが広がりにくくなります。
怒りのピークの6秒間に体を動かすことで、最悪の事態が避けられます。さらにひんぱんに行うと、怒りにくい心を作れます。
●怒りを上手に出す 6つのテク
気心が知れた身内ほど、遠慮なく怒りをぶつけてしまい、後悔することに。カッとして言ってしまったとき、本当にそこまで激しく言う必要があったのか、自分に問いかけてみて。
たとえば子育てでは、命にかかわる危険なことや、他人を傷つけることは、瞬時に怒る必要もあります。しかし、そうでないことは「冷静に言い含める」など、自分なりの境界線を考えて。これをくり返すとムダな爆発が減っていきます。
高校生の娘が連絡もなしに門限までに帰らないときなど、「どれだけ心配したと思ってるの!」と、心配する気持ちを怒りとしてぶつけてしまうことも。
怒りには“自分の気持ち”と“リクエスト”の、2つの要素が入っていますが、ほとんどの人が“心配した”など自分の気持ちをメインにしがち。 「遅くなると危ないから門限を守ってね、心配だから」と、リクエストを先に伝えて。怒りの理由が伝わりやすく、感情も抑えられます。
「だから言ったでしょ!」など、感情をストレートに表現していませんか?頭に血が上ると、内容より声の強弱で怒りを表しがち。すると相手は、攻撃されていると感じ、頑なになります。
「短い言葉で激しく」言わず、何が問題なのかを落ち着いて表現を。あなたの望みが伝わり、相手も受け入れやすくなります。
共働きで大忙しなのに、夫は食器をシンクに運ぶだけで「手伝った」気に 。妻は「また私が洗うの!?」とイライラ。
相手へのリクエストが「手伝ってよ!」という漠然としたものでは伝わりません。まず自分の中で、“何を、いつまでにどうしてほしいのか”を明確にして。 「休日の皿洗いと洗濯物たたみはお願い」など具体的に。伝え方ひとつで相手の行動は変えられます。
怒るときは「(あなたって)いつもそうね!」「(あなた)何考えてるの!」と、主語を相手にしがち。するとその後は、非難の言葉になってしまいます。
相手ではなく “私” を主体とする考え方を“アサーティブ”と言い、怒りを伝えるときにも使えます。怒ったときに最初に口にする言葉を “私は” にするだけで効果があります。
たとえば、貸したものを返さない友人には、「いつも返さないよね!」でなく、「ないと私が困るので返してほしい」に。言いやすく、伝わりやすくなります。
職場などで自分が怒られたとき、不思議と素直に言うことを聞ける上司と、そうでない上司がいませんか。
上手に怒れる人は、“いつでもどこでも誰にも同じように怒れる”というルールが守れています。自分の好き嫌いで怒り方を変えるような上司は信頼されません。
例えば夫に対しても、自分の気分次第で怒ったり、子どもに対し、きょうだいで叱り方に差をつけるのはルール違反です。怒り方には一貫性を。
「美味しいものを食べるのも効果的なストレス解消法ですが、お酒での解消は要注意。やがてお酒なしではストレスに対応できなくなります。気持ちを緩ませる安全な方法を探しましょう」
(からだにいいこと2017年2月号より)
米国で出会ったアンガーマネジメントの理論とノウハウを日本に紹介し、日本の文化習慣に合った形にローカライズして普及に努めている。世界で15人しかいない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルのひとり。アンガーマネジメントに関する著書多数、アジア各国語版も出版されている。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、ナショナルアンガーマネジメント協会 日本支部長。
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