この記事の監修:高尾美穂さん
生理前や生理中に、眠くなるのはなぜ? 理由を解説
実は生理前と生理中では、眠気がおこる理由が違います。眠気の原因を知って、生理前・生理中の自分と上手に付き合う方法を見つけましょう。
(1)生理前に眠くなる理由は?
そもそも、良い睡眠に重要なのは、体温の高低差。人間の体は体温が下がると眠くなるという仕組みが備わっています。日中の高い体温と、眠る直前の低い体温のメリハリが大きいほど夜に熟睡できます。
しかし女性の体は、排卵後から生理がくるまでの約2週間、「プロゲステロン」というホルモンが分泌することにより、体温が高い状態(高温期)となります。
すると1日の体温のメリハリが小さくなり、入眠時に体温が下がりきらないので「眠いのに寝つけない」「眠りが浅い」状態になり、昼間にぼーっとしてしまう原因になるのです。
これが生理前に日中眠くなる主な理由ですが、生理前はほかにもいくつかの原因があります。
たとえば“幸せホルモン”とも呼ばれる脳内物質「セロトニン」も関係しています。排卵後~生理前に「プロゲステロン」が優位になると共に、セロトニンの分泌量が下がっていきます。
生理前に「セロトニン」が減少することで、心は不安を感じやすくなります。それにより眠るときにリラックスできない、布団の中でも考えごとをして目が冴えてしまう、といったことがあります。これが寝つきや睡眠の質を悪くし、結果として日中の眠気につながっています。
眠るためには「副交感神経」優位でリラックスした状態が理想のため、「交感神経」が優位であることは夜の眠りにも悪影響があるといえます。
このように、生理前は「体温の変化」「セロトニン分泌」「自律神経」といったさまざまな理由から眠気が強くなりやすいのです。
これは体の自然な変化なので無理に逆らう必要はありません。次からは、生理が始まっても眠くなってしまう理由を説明していきます。
(2)生理中に眠くなる理由は?
本来ならばぐっすり眠れるようになり、眠気が和らぐ時期。しかし、生理が始まっても日中の眠気に悩む人は多くいます。
実は、生理前に続いた睡眠不足が積み重なり、生理中にまで影響を及ぼしているのが「眠気」の正体。生理が始まってからも眠い本当の理由は、ホルモンや体温のせいではなく、借金のように溜まってしまった「睡眠負債」なのです。
生理前・生理中の眠気がつらい…。対処法・予防法は?
(1)眠いときの対処法「コーヒーを飲んで30分以内の昼寝をする」
その際のポイントは、「体をフラットな状態にしない」こと。デスクにうつ伏せになる、イスの背もたれにもたれかかって眠るなど、横にならずに寝ると睡眠が深くなりすぎません。仕事の休憩中にも、職場のデスクやカフェなどで試してみてください。
さらに、昼寝の前に温かいコーヒーを飲むのもおすすめ。温かいものを胃に入れると一時的に寝つきもよくなる上、カフェインの影響で昼寝を始めて20~30分後くらいにすっきり目覚められます。
大切なのは夜の睡眠ですので、昼寝はあくまでも「浅く、短く」。16時以降の昼寝は、夜の睡眠に悪影響を及ぼすので、やめましょう。
(2)眠気を軽くする予防法「睡眠負債を作らない」
なぜなら「睡眠負債」は溜まってしまうと簡単には取り戻せないからです。たとえば、最低7時間が必要なのに約6時間しか寝ないとすると、睡眠負債は1時間になり、「1週間で7時間」になります。
これでは週末に「プラス7時間」寝ないと不足したままになってしまいます。睡眠負債がふくらまないためにも、生理期間に限らず毎日7~9時間は確保しましょう。
日本人女性は世界的にみても圧倒的に睡眠時間が短いといわれています。普段から自分の睡眠を見直すことは、生理中の眠気の予防にとても効果的です。
それでも生理中の眠気が我慢できないなら病院に行くべき?
睡眠が足りているといえるのは「昼間に一瞬たりとも眠くならない」状態であること。少しでも眠くなることがあれば、あなたの睡眠は足りていません。実際は、ほとんどの女性が睡眠不足なのが現状です。
それを知るためにも、まず1カ月(1クール)を目安に「睡眠記録」をつけて、自分の睡眠を振り返ってみることが改善の第一歩です。月経周期と睡眠の変化がどのように関わっているのかを記録からみてみると、「この日は生理前なのに夜更かししていた」「夕方、電車で30分以上うたた寝をした」など、夜の熟睡を妨げる原因が見つかるかもしれません。
眠気を防ぐためにも「生理前・生理中は早めに帰宅して早く寝る」ことを意識して生活しましょう。
睡眠記録をチェックして、それでも眠気に悩まされる場合は、生理前の不快な症状「PMS(月経前症候群)」が重い傾向にあるのかもしれません。その場合は、ガマンせずに婦人科を受診して、医師に相談をしてみましょう。
日々臨床現場での診療を続けながらもメディア出演やヨガ講座を精力的に行うなど、活動は多岐に渡る。Twitterやブログなどでは女性の健康をサポートする情報を発信している。
文部科学省・国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー、株式会社ドーム(アンダーアーマー)のアドバイザリードクター、ヨガインストラクターとしても活動中。
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