レントゲンで見つけにくい肺がん。未来の健康のために禁煙を!

公開日:2019.5.30

更新日:2019.11.7

レントゲンで見つけにくい肺がん。未来の健康のために禁煙を!

5月31日は、「世界禁煙デー」です。昔に比べるとタバコを吸わない人が増えましたが、日本は先進国の中でもまだまだ禁煙対策が遅れています。「タバコをやめられない」といった人のために、喫煙や受動喫煙がいかに健康を害するのかをご紹介していきます。家族にタバコをやめさせたい、家族の肺がんが心配…という人もチェックを!

この記事の監修

大谷義夫さん

池袋大谷クリニック院長。日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医。肺の疾患、睡眠時無呼吸症候群の診断・治療の他、禁煙サポートなども行う。テレビや雑誌などのメディアでも活躍。生活に役立つ分かりやすい健康アドバイスで人気。

タバコで余命が10年短くなる

「百害あって一利なし」。そう分かっていても、タバコは愛煙家にとって唯一の至福の時なのかもしれません。では、タバコを吸うか吸わないかの違いで、「余命が短くなる」といわれたらどうでしょうか。海外の研究データで、吸う人は吸わない人よりも、余命が10年短くなることが明らかになっています。禁煙はいつ始めても、遅いということはありません。歳をとってから禁煙しても、吸わないよりも余命が伸びることが分かっています。大切な家族やパートナーと過ごす時間を、少しでも延ばしたいと思いませんか?
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肺がんはレントゲンで発見しにくい

喫煙を続けると、自分はもちろん家族まで肺がんやその他の病気になるリスクがアップします。肺がんは、他の臓器に比べ、レントゲンで早期に発見することが難しいがん。レントゲンを撮ってもろっ骨や横隔膜、心臓などが重なり、レントゲン1枚のうち約50%が見えづらくなります。早期に発見できて手術で取り除くことができればいいですが、がんができる場所によってはほとんど自覚症状がなく、進行してから見つかることも。タバコを吸っていて、息切れしやすい、呼吸が苦しいという人は、ドーナツ状の機械に入って断層撮影をする「CT検査」で一度調べたほうがいいでしょう。

タバコによる病気は「肺がん」だけではない

タバコ=肺がんというイメージですが、実はタバコは、肺がんだけでなく、口腔・咽頭がんや食道がんなどの口やのどのがん、胃がんや肝臓がん、膀胱がん、女性の子宮頸がんなどにも関係しています。また、血管をボロボロにして心臓の病気(虚血性心疾患)や脳卒中、慢性的なぜんそくも引き起こします。タバコは、肺がん以外にもさまざまな病気の元凶になるのです。
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喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書平成28年8月より

肺胞が溶ける「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」

タバコを長く吸っていることで、肺胞が溶けてしまう「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」もこわい病気です。肺胞とは、肺の容積の多くを占め、気管支が細かく枝分かれした末端の小さな袋のこと。肺胞が溶けると、二酸化炭素と酸素の交換ができなくなり、息を吸うのも吐くのもつらくなり、常に息苦しい状態に。COPDになると、一生酸素が手放せなくなるかもしれません。日本人の40歳以上のうち、8.6%がCOPDであるという調査もあります(*1)。そのうち多くの人は、未診断で未治療。COPDと肺がんの両方を発症することもあります。タバコを吸っていなくても、受動喫煙によってCOPDになる可能性もあるのです。

*1 順天堂大学医学部 福地氏らによる大規模な疫学調査研究NICEスタディ(2001年発表)
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左は「正常肺」、右は「COPD」の肺。肺胞が解けて、真っ黒に映っています。

発がん性物質は、50種以上も!

ニオイだけでなく、タバコの煙が目に染みたり、目が痛くなったりといった経験はありませんか? それは体に悪い物質がたくさん含まれているからです。タバコの煙には、2000種以上の有害物質が含まれ、そのうち発がん性物質は50種以上もあるといわれています。代表的なのは、ニコチンやタール、一酸化炭素、ヒ素など。喫煙は、体にとって“毒”となるものを、毎日口から吸いこんでいるということを忘れてはいけません。
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受動喫煙で、子どもの知能指数が低下

ここまで読んでも、「そうはいってもなかなかやめられない」「体に悪いなんて分かって吸っているんだ」というスモーカーの声が聞こえてきそうですね。では、受動喫煙で子どもの知能指数低下がしたり、体の発育が低下したりするといわれたらどうでしょうか。大人と違い、発育途中の子どもはタバコによる影響が深刻です。
【受動喫煙による子どもの病気例】
・中耳炎
・気管支喘息
・呼吸器感染症
・呼吸機能低下
・小児がん
・言語能力の低下
・落ち着きのなさ
・身体発育の低下

喫煙と健康問題に関する検討会編:新版 喫煙と健康 保健同人社:200,2002[L20120217027]
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PM2.5よりも細かい、タバコの有害物質

肺は、“五臓”の中で、呼吸を通じて唯一外界と接する臓器。だからこそまわりの環境に影響されやすく、クリーンな環境で過ごすことが、自分にとっても家族にとっても大切になります。

中国などの大気汚染でよく問題になる「PM2.5」。「PM2.5」とは、2.5㎛(マイクロメートル)以下の微粒子の総称のことをいいます。小さいので吸い込みやすく、呼吸器に容易に入ることで病気や不調を引き起こします。実はタバコの有害物質は、PM2.5どころではなく、PM0.1。つまり、0.1㎛(マイクロメートル)の微粒子なのです 。タバコの有害物質のほうが細かいため呼吸器の末端まで吸い込まれやすく、喫煙者が少し移動しただけでもふわふわと有害物質が広がってしまいます。換気扇の下、ベランダで吸っても、家族の受動喫煙は避けられません。

自分でやめられないなら禁煙外来へ

喫煙はお金もかかるうえに、自分や家族の健康までも脅かします。タバコを吸える場所がどんどん少なくなり、タバコを吸うために喫茶店に入ってコーヒーを飲んだり、仕事中に遠回りして喫煙所を探したり、喫煙により無駄なお金と時間が増えると思いませんか? 禁煙をして、その時間とお金を、自分や家族の幸せな時間に使ってください。「禁煙が続かない」「分かっていてもやめられない」という人は、禁煙外来をおすすめします。医師のアドバイスと、タバコがおいしくなくなる薬や貼るニコチンパッチで、無理なくタバコをやめることができます。長い将来のためにも、吸っている人は今日から禁煙を始めましょう。
イラスト/ 碇優子