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カルシウムだけではダメ?骨を丈夫にする「ビタミンD」のすごいパワー

栄養に関する研究で世界をリードするDSM社の“ビタミン博士”こと乾泰地さんが、栄養が深く関わっている不調について教えてくれるこの連載。第5回のテーマは「ビタミンD」です。近年、「ビタミンD」の健康効果が次々に明らかになっています。骨や肌の健康など、女性が摂るべき理由や、おすすめの摂り方を教えてもらいました。

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体内で生成できる唯一無二のビタミン

「ビタミンD」

骨の健康などに関わるビタミンとして、じわじわと注目を浴びている「ビタミンD」。ビタミンCやBは知っていてもビタミンDは、まだまだなじみのない人も多いのではないでしょうか。私たちの健康に欠かせない、必須栄養素のビタミン。そのほとんどは体の中で作ることができず、食べものから摂るしかありません。しかしビタミンDは、ビタミンの中で唯一、自分の体内で生成できるのです。ビタミンDは魚やきのこなどの食べものにも含まれていますが、太陽を浴びることで体内で生成できるという特徴があります。

日本人はビタミンDが全く足りていない

ビタミンは毎日の健康に必要不可欠ですが、多めに摂取すると別の働きもあらわれて、将来の健康に役立つことが分かっています。つまり、健康を“貯金”できるというわけです。この貯金をどれだけできているかは、3段階にわけられます。

病気にならない最低限の基準を満たしていない「欠乏」、最低限は満たしているけれど十分ではない「不足」、十分に必要な基準を満たしている「充足」です。お金に当てはめてみると、栄養が足りずに病気になってしまう借金状態の「欠乏」、借金はないけれども将来に向けた貯金を切り崩している「不足」、そして将来に備えて栄養を多めに摂取できている「充足」ということになります。この“健康貯金”効果を一番期待されているのがビタミンDです。

しかし、多くの日本人は、男女ともにビタミンDが「不足」した状態でありながら(※1)、十分な量を摂取できていません(※2)。ビタミンDの中には種類があり、きのこに多く含まれる「ビタミンD2」と、魚に多く含まれる「ビタミンD3」があります。日本人のビタミンDが「欠乏・不足」している理由には、食生活が欧米化して、昔より魚を食べなくなってしまったことが考えられます。また、女性にとっては必須アイテムですが、実は日焼け止めが普及していることも一因です。

ビタミンD不足をチェック!

それでは、今のあなたはビタミンDが足りているのかをチェックしてみましょう(※3)。次から紹介する1~7の項目で当てはまるものに一つずつチェックを入れていき、合計の点数を出してください。合計が31点以上になった人は要注意!

(1)あなたの年齢は?
□50歳以上 (0点)
□40歳以上50歳未満 (0点)
□40歳未満 (5点)

(2)あなたの性別は?
□男性 (0点)
□女性 (8点)

(3)今の季節は?
□春(4月~6月) (4点)
□夏(7月~9月) (0点)
□秋(10月~12月) (4点)
□冬(1月~3月) (7点)

(4)運動(スポーツ)をどれくらいしますか?
□全くしない (7点)
□月1~2回 (5点)
□週1回 (0点)
□週2回以上 (0点)

(5)この12ヶ月間の日焼けの有無と、日焼け止め使用の有無について、当てはまるものを選んでください。日焼けとは肌が黒くなることをさします。週5、6日以上使用しているなら、「日焼け止め使用有り」を選びましょう。
□「日焼け有り」で「日焼け止め使用無し」 (0点)
□「日焼け有り」で「日焼け止め使用有り」 (2点)
□「日焼け無し」で「日焼け止め使用無し」 (2点)
□「日焼け無し」で「日焼け止め使用有り」 (9点)

(6)この3ヶ月間に、腕や足などが出るような軽装で、日光を浴びたことはどれくらいありますか?
□いつも(毎日) (0点)
□たいてい(5、6日/週) (0点)
□ときどき(3、4日/週) (0点)
□まれに(1、2日/週) (6点)
□全くない(1日未満/週) (9点)

(7)以下の魚は普段どのくらい摂取しますか?
※例えば、「さけ」を週に2回、「いわし」を週に1回食べる場合には、合計で週3回の摂取となり、「週に2回以上」の0点にチェックを入れます。
   ・さけ (目安:1切れ<100g>)
   ・いわし (目安:中1尾<50g>)
   ・さんま (目安:1尾<100g>)
   ・カレイ (目安:1切れ<100g>)
   ・ウナギ (目安:1串<100g>)
   ・ニシン (目安:1切れ<100g>)
   ・いさき (目安:1尾<100g>)
   ・かわはぎ (目安:1尾<50g>)
□週に2回以上 (0点)
□週に2回未満 (9点)

項目1~7の合計点数が「31点以上の人」は、ビタミンD欠乏の可能性が高くなります。ビタミンDのサプリを飲んでいるならその可能性は低くなりますが、意識して摂取している人は多くはないはず……。ふだん私たちがあまり摂取できていないビタミンD。実は、女性の健康にとても重要な役割を果たしています。

ビタミンDは体のあちこちで大活躍!

ビタミンDには体のさまざまな部分で健康を保つ働きがあります。しかも、女性にとっては欠かせない栄養素。体内のどこでどのような働きをしているのかご紹介しましょう。

働き(1) 骨を丈夫にする

「ビタミンD」

ビタミンDは、丈夫な骨を作る「カルシウム」の吸収を促して、骨を強くします。小腸の粘膜にある「上皮(じょうひ)細胞」にカルシウムが通り抜けるトンネルがあり、ビタミンDがこのトンネルを増やしてくれます。トンネルが増えるということは、カルシウムがたくさん吸収されるようになるということ。カルシウムだけ摂取しても、吸収されなければそのまま排出されてしまいます。カルシウムを摂るときは、ビタミンDも一緒に摂るとよいでしょう。

特に女性は、更年期にさしかかると「骨粗しょう症」のリスクがアップします。それは、女性ホルモンの低下により骨密度が下がるから。骨密度は、年を取るにつれて減っていき、一度減ったら増えることはありません。しかし、ビタミンDを貯金しておけば、加齢と共におこる骨密度の減少を軽くすることができます。将来の丈夫な骨のために、ビタミンDを今から多めに摂っておくことが大切です。

赤ちゃんの骨のためにも必要!

ビタミンDは、妊娠中もしくは妊活中の女性にも大切。ビタミンDが足りていないと、赤ちゃんの骨がしっかり作られなくなる「くる病」という病気が起こる原因に。くる病は過去に流行し、いったん減少しましたが、近年、美白の観点から日焼け止めの使用が定着し、ビタミンDが足りない妊婦さんが増えたことで復活してしまいました。妊娠・妊活というと「葉酸」が注目されますが、赤ちゃんの成長のためにビタミンDもしっかり意識しましょう。

働き(2) 健康的な肌をサポート

「ビタミンD」

ビタミンDは、皮膚の分解や細胞作りにも関わっています。ターンオーバーを正常にすることで、皮膚の健康を支えてくれます。また、皮膚の炎症をコントロールする働きも。肌荒れなどの炎症が起こったときに、肌トラブルを抑えてくれます。

つまり、サンケアをしすぎると、実は逆に肌が弱くなるということ! 日焼けが気になる方は、食事でのビタミンD摂取を意識して、体の内側から健やかな肌づくりを心がけるといいですね。

働き(3) 大腸がんや糖尿病リスクにも関係

ビタミンDの働きはまだあります。糖尿病は、血糖値をコントロールするホルモン「インスリン」が、十分に働かないために起こってしまう病気です。ビタミンDは、糖尿病になりやすい人のインスリンの働きを整えて、血糖値をコントロール。実際に、糖尿病患者とそうでない人を比べると、ビタミンDが足りていないという報告があります(※4)。さらに、ビタミンDには大腸がんなどのがんのリスクとも関係があるという研究結果(※5)や、病気に対する免疫細胞を活性化させるという調査(※6)もあり、世界各国で新たな健康効果が明らかになってきました。

これだけでもビタミンDのパワーはすごいということが分かりますが、まだまだ研究は続いています。今後、もっとすばらしい効果が発見されるかもしれません。

魚ときのこでビタミンDをチャージ

ビタミンDを食べものから効率よく摂取するには、ズバリ「きのこ」と「魚」がおすすめです。ビタミンD量がアップするテクニックもご紹介します。

●「ビタミンD2」を多く含む食材
【きのこ】
しいたけ
まいたけ
キクラゲ など

「ビタミンD」

きのこは、屋内栽培より太陽の光を浴びて育った方がビタミンDを多く含んでいます。きのこは日光に当たるとビタミンDが増えるという特徴があり、露地栽培のきのこはビタミンDがたっぷり! 干物コーナーの乾燥きのこなら、太陽の光を浴びた天日干しのものを選びましょう。ちなみに、屋内栽培のきのこでもビタミンDをたくさん摂る方法があります。それは、晴れた日に1~2時間ベランダで置いておくこと。太陽の光に当てるだけで、ビタミンDを増やすことができますよ!
●「ビタミンD3」を多く含む食材
【魚】
しらす

サバ

「ビタミンD」

しらすは1/2カップ、鮭とサバは切り身半分で1日に必要なビタミンDを摂取することができます。
ビタミンは、体内にとどまる時間が短く、尿と一緒に排出される種類もありますが、ビタミンDは体内に1週間ほどとどまる特徴があります。おすすめは、週3~4回は魚を食べること。また、油に溶けて、熱に弱く酸に強い性質があるため、より多くのビタミンDを摂るならマリネやカルパッチョがよいでしょう。

魚やきのこから摂取する他、太陽を浴びることでも体内でビタミンDを作り出すことができます。室内にこもってばかりではなく、毎日外に出る時間を持つよう心がけましょう。下記のサイトでは、住んでいる地域で効率よくビタミンDを生成できる日光浴の時間がリアルタイムで分かります。参考にしてみてくださいね。

イラスト/斉藤明子

ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報|地球環境研究センター

ふだん意識している人が少ないビタミンDですが、実は骨や肌の健康を守ったり、病気のリスクに関係する“スーパービタミン”。きのこや魚を食べたり、日光浴をしたりしてビタミンDをチャージする心がけを。魚を食べる機会が少ない人は、サプリで摂るのもいいでしょう。

出典/
※1…第6回「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000209592_00004.html

※2…平成29年国民健康・栄養調査より

※3… Kuwabara, A, Tsugawa, N, Mizuno, K, Ogasawara, H, Watanabe, Y and Tanaka, K (2019). “A simple questionnaire for the prediction of vitamin D deficiency in Japanese adults (Vitaimn D Deficiency questionnaire for Japanese: VDDQ-J).” Journal of Bone and Mineral Metabolism 37(5): 854-863.

※4… Holick, MF (2011). “Vitamin D: Evolutionary, Physiological and Health Perspectives.” Current Drug Targets 12(1): 4-18.

※5… Kuwabata, A (2019). “The association between vitamin D status and cancer.” Vitamins 93(1): 25-28.

※6… Christakos, S, Dhawan, P, Verstuyf, A, Verlinden, L and Carmeliet, G (2016). “Vitamin D: Metabolism, Molecular Mechanism of Action, and Pleiotropic Effects.” Physiological reviews 96(1): 365-408.

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