この記事の監修:秋津壽男(あきつ・としお)さん
お酒を飲んで悪酔いしてしまう原因は?
そもそもお酒を飲んで“酔っぱらう”というのは、アルコールの薬理作用で脳の感覚が麻痺した状態のこと。
酔いを起こすアルコール物質は、体内に入ると肝臓で処理されます。肝臓が「エチルアルコール」を「アセトアルデヒド」という物質に変え、そのあと「酢酸(さくさん)」に変換します。最終的には「二酸化炭素」と「水」という体に害のない物質になります。
悪酔いする・しないは、遺伝や体質に関係ある?
アルコールが肝臓で分解されるときには、以下の2つの「酵素」が使われます。
【第一段階】エチルアルコールを→アセトアルデヒドに分解するときは➡(1)「アルコール脱水素酵素(ADH1)」
【第二段階】アセトアルデヒドを→酢酸に分解するときは➡(2)「アセトアルデヒド脱水素酵素(ADH2)」
お酒に強いか・弱いかには3タイプあり、
(1)と(2)の酵素をどちらも持っている人=お酒に強い
(1)の酵素は持っていなくて(2)は持っている人=お酒は飲めるけど弱い
(1)も(2)もどちらの酵素も持っていない人=お酒がまったく飲めない
に分けられます。
ただし、どのタイプも分解能力をオーバーするような飲み方をすると、悪酔いにつながります。
また、二日酔いは一晩寝てもアルコール分解が追い付かず、翌日になっても「アセトアルデヒド」が体内に残っているため起こります。このように、飲みすぎると翌日まで肝臓がフルパワーで働かないといけないわけです。
悪酔いしないための飲み方のポイントは?
① 【飲む前】30分から1時間前に“ちょい食べ”
② 【飲み始め】“駆けつけ3杯”は悪酔いのもと
③ 【飲み始め】つまみはビタミンB群で分解をサポート
④ 【飲んでいる間】ゆっくりダラダダ飲む
⑤ 【飲んでいる間】つまみを食べながら飲む
⑥ 【飲んでいる間】水割り・炭酸割でアルコール濃度を下げる
また、日本酒やワインは、お水を飲みながら飲むと胃の中でアルコールが薄まるので、悪酔いを避けられるでしょう。お茶やジュースを水変わりに飲むのは、脱水につながるので注意を。
⑦ 【飲んだ後】コップ2~3杯の水を飲む
また、二日酔いで起こりやすい頭痛も水分不足によるもの。二日酔いによる不調を避けるためにも、多めの水分摂取は重要です。
日本酒は悪酔いしやすい?
戦後直後の「三増酒」という、合成アルコールと水あめで作った昔の日本酒は悪酔いしましたが、現在の日本酒は米の質が高く、技術も向上し、ほとんど悪酔いするものはありません。
ただし、分解酵素のある・なしで体質に合わない場合もありますので、悪酔いすると感じるなら避けたほうがいいでしょう。
「家飲み」で悪酔いしないためには?
外よりもリラックスできる自分の家は、飲むペースが速くなったり、つい飲みすぎたりしやすくなります。紹介した7つのポイントを心がけることはもちろん、大事なのは飲み終わりの時間を決めておくこと。
特に、オンライン飲み会は制限なく飲んでしまいがちなので、飲み会の最初に「今日はこの時間まで」と相手と一緒に決めてから飲むほうが、お互い悪酔いせずに済みますよ。
タバコは有害無益ですが、お酒は「百薬の長」ともいわれるように、適量を上手に飲めばプラスの効果も期待できます。食欲を増進する、善玉コレステロールを増やす、ストレス解消といった、体と心への健康効果のほか、人とのコミュニケーションツールとしても使えます。
「悪酔いしない飲み方」で楽しく健康的にお酒と付き合っていきましょう。
秋津医院
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